第1話 紅茶の香りの王子
紅茶の国・テイシャ、陽の月…―。
新緑が華やかに森を彩り、まぶしいほどの鮮やかな光が私に降り注ぐ。
(この森を抜けたら、もうお城は間近かな?)
ハルディーン王子を目覚めさせたお礼を、と招待された城へ向かう途中のこと……
ふわりと芳醇な香りが、どこからともなく香って、私の鼻先をくすぐってた。
(いい香り……何の香りだろう?)
香りに誘われるように、森の奥へ歩いて行くと…―。
(ハルディーン王子!?)
草原の大地が広がる中、ハルディーン王子が寝そべって眠っていた。
思わず、起こさないようにそっと近づいて、彼の顔をそっと見下ろす。
(気持ちよさそうに眠ってる。穏やかな寝顔)
きらきらと輝いていたあの瞳は今は伏せられ、長く濃いまつ毛が縁取っている。
褐色の肌にかかる柔らかそうな髪が風にすくわれて、ふわりと額をあらわにした。
(近くで見ると、いっそう綺麗な顔してる……)
(それにこのいい香りは、ハルディーンさんから?)
自然と、顔を近づけてしまった時だった。
ハルディーン「ん~……」
ハルディーン王子が眠そうな目を、ゆっくりと開いた。
ハルディーン「……ん? オマエは……」
ハルディーン「昼寝まで起こしてくれるとはな」
○○「あ……」
ハルディーン「礼を言ってなかった。オレを眠りから目覚めさせてくれてありがとうな」
ハルディーン王子が人懐っこい笑顔を私に向けながら起き上がると、
先ほどの心地よい香りが、ふわりとまた香ってきた。
ハルディーン「それに、来てくれてありがとう。オレ、またオマエに会いたかったからな!」
にっこりと無邪気な笑みなのに、
甘い香りに刺激されるように、胸が小さく音を立てた…―。
つづく……
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- 最終更新:2017-02-22 23:29:48