第2話 あだ名は……

再会したハルディーン王子は、とても気さくで……その印象は、“王子らしくない人”だった…―。

ハルディーン「……オマエ、たしか○○って名前だったよな」

唐突に、ハルディーン王子が薄紫色の瞳をまじまじと私に向ける。

○○「はい」

ハルディーン「……う~ん」

ハルディーン王子は、考え込むように目を閉じる。

(どうしたのかな?)

○○「ハルディーン王子?」

私が顔を覗き込もうとすると、ハルディーン王子が、爛漫に私に笑いかける。

ハルディーン「そうだ! オマエの名前はシュガーだ」

○○「え……!?」

(シュ……シュガー?)

ハルディーン「オマエから甘くていい香りがする。だからこっちの名前の方が合ってるだろ?」

○○「そ、そうですか?」

ハルディーン「ああ、そうだ。オレは気に入った奴じゃないと呼び名を考えない。感謝しろよ?」

少しおどけたかわいらしい様子で言うハルディーン王子に、私は…―。


~太陽~

(シュガー……か。かわいいよね)

突然でびっくりしたけど、なんだか甘い気持ちになって、笑みがこぼれた。

○○「ありがとうございます!」

ハルディーン「おう。絶対気に入ると思った!」

ハルディーン王子は、満足そうに微笑んだ。


~月~

○○「で、できれば別の名前で……」

ハルディーン「なんだ? 気に入らなかったのか? オマエにピッタリだと思ったのにな」
ハルディーン「じゃあ……プクプクなんてどうだ!?」
ハルディーン「オマエの頬、そんな感じだから!」

○○「……シュガーでお願いします」

ハルディーン「おう、シュガー!」


~共通~

○○「ハルディーン王子は、ここがお気に入りの場所なんですか?」

ハルディーン「ああ、太陽の光が気持ちいいし、静かだしな。自然の香りが特に好きなんだ」

○○「そうなんですね」

ハルディーン「……なんか、堅苦しいな」

○○「え?」

ハルディーン「そうだ、まずは敬語をやめろ」

○○「でも……」

(まだ知り合ったばかりだし……)

ハルディーン「それと、シュガーもオレのこと、ハルでいいから」

(出会ったばかりの王子様をあだ名で呼ぶなんて)

ハルディーン「どうした?」

○○「次期国王をあだ名で呼ぶのは、失礼ではないですか……?」

ハルディーン「次期国王ね……」

ハルディーン王子は、苦笑いをすると、短くため息を吐いた。

○○「ハルディーン王子?」

不意に陰った表情に、心配になって呼びかけると、彼は慌てた様子で笑顔になった。

ハルディーン「ほら、オレって国王とか、そんな柄じゃないだろ。ほんっと、どうしてオレが王子なんだろうなー」

(ハルディーン王子……なんだか無理してる?)

○○「あの、ハルディーン王子、何か心配事でも」

ハルディーン「違うぞ。ハルディーンじゃなくてハル、だろ」

○○「あ……うん。ハル」


ハルディーン「よくできた、シュガー」

ハルディーン王子……ハルが、満足そうに笑いながら、私の頭をくしゃくしゃに撫でる。

○○「あ…ハ、ハル……! 髪がっ」

ハルディーン「ハハッ、変な髪型だ」


○○「それは、ハルが髪を…―」

(あれ……?)
(いつの間にか、自然に話せてる)

私はすっかりハルのペースに巻き込まれている。

(不思議な人)

私達の笑い声は、のどかな雲がたなびく空高くまで昇っていった…―。


つづく……






  • 最終更新:2017-02-22 23:31:04

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