第4話 もどかしい気持ち

テラスに出た私達は、ライトアップされたパビリオンを並んで見つめていた。

(メディさんは……今、何を考えているのだろう?)

メディ
「……」

何も語らず、メディさんは静かに景色を見つめている。

夜風が時折、メディさんの薄桃色の髪をふわりと揺らした。

○○
「やっぱり……今日のメディさんは、少し雰囲気が違う気がします」

メディ
「そうかい?」

自覚がないのか、それとも何かを隠しているのか……

メディさんは微笑みを浮かべ、私の言葉の続きを待つ。

○○
「楽しいことを言ったと思ったら、突然、真面目な顔をしたり……」

メディ
「ちょうど曲が終わったようだね」

(あの時の表情も……)

メディさんらしくない笑みが、頭の隅から離れない。

○○
「教えてください……何を思っているんですか?」

メディ
「……」

口を閉ざしたまま、メディさんは静かに私を見つめている。

私は…-。

○○
「なんだか、もどかしいです」

○○
「本当のメディさんを、見られていない気がして……」

メディ
「そんな顔をしないで。ハニーにはいつも笑っていてほしい」

辺りに鐘の音が鳴り響き、舞踏会の終わりを知らせる。

メディ
「そろそろ、皆との待ち合わせの時間だね!」

メディ
「ハニー、行こうか。これでキミとの甘く芸術的な時間も終わりだと思うと、名残惜しいけれど!」

またいつも明るい笑みを浮かべて、メディさんは私の頭に優しく手を乗せた。

伝わる温かさと重みに、なぜか胸がきゅっと締めつけられる。

メディ
「約束通り、一夜限りの甘いひとときだから……仕方ないね」

メディさんは、私の頭をそっと自分の胸に引き寄せた。

○○
「……っ」

メディさんの鼓動は、トクトクと速く鳴っていて……

メディ
「……」

ゆっくりと腕から解放されると、彼の温もりと消えていった。

メディ
「皆、待っているかな?彼らとお土産を買うのもいいね!」

まるで振り切るかのように、メディさんはホールの方へ足を向ける。

(メディさんは、どうして今……私を抱き寄せたの?)

疑問ばかりが募っていき…-。

○○
「待ってください!」

このまま終わってほしくなくて、私はメディさんの腕を掴んだ。

メディ
「……ハニー、どうしたんだい?」

肩越しに振り返り、メディさんが静かに私に問いかける。

○○
「えっと……」

何をどう話していいかわからず、私はメディさんと過ごした時間を思い返す。

――――――――
メディ
「一夜限りの甘いひとときを、ハニーと過ごしたいんだ」
――――――――

――――――――
メディ
「さあ、今日だけの特別な時間を楽しもう」
――――――――

(一夜限り……今日だけ……どうしてメディさんは何度もそう言ったの?)

○○
「メディさん、どうして私を誘ってくれたんですか?」

メディ
「それはもちろん!キミとダンスを楽しみたかったからだよ」

笑い声交じりに言うと、メディさんはやんわりと腕から私の手を離した。

○○
「……はぐらかさないでください」

メディ
「!」

手に絡んだままのメディさんの指先が、強張るのを感じた。

メディ
「……はぐらかしては、いないんだけどね」

○○
「今日だけだってメディさんはずっと言っていました」

○○
「それは、この舞踏会が開かれる今日が特別な日だからという意味かと思っていましたけど……」

○○
「でも…-。」

メディさんが、私の唇にそっと指を添えた。

メディ
「降参だよ」

瞳をわずかに細め、メディさんが静かに微笑む。

切なさのにじむその瞳に、私の胸は苦しいほどに締め付けられるのだった…-。

  • 最終更新:2018-02-24 18:15:36

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